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自作(主にリグなど高周波関係)のためのヒントです。
私の工作は、片面基板をベタアースにして、その上に「四つ目基板」を切ったもので配線する方式です。
回路図はシャーシ内の実際の部品配置に合わせて描いています。回路図上で、周波数調整のバリコンが最も左側に来るように描きます。
例えばパネルの左側にバリコンを付けたいのなら、回路図ではバリコンが左上に来るように、パネルの右側にバリコンを付けたいのなら、回路図ではバリコンが左下に来るように描きます。正面から見て右側の側面が、回路図の下面に対応します。バリコンの配線を優先順位最大の「最短距離」にするためです。
電子工作に用いるアルミシャーシには、次の種類があります。
「小型の測定器で据え置き型にしないもの」以外は、パネルが1枚板で取り外せるシャーシを使うことをお薦めします。
安物のシャーシは、一度パネルを加工すると修正が利きませんし、全ての加工において底面と背面パネルが付いてくるので、作業上の制約があります。また、好みの問題とはいえ、デザインが単調で飽きてきます。
パネルが1枚板で取り外せるシャーシであれば高精度の加工も可能で、文字入れや塗装も自由自在です。失敗してもパネルだけ取り替えることができます。高価なシャーシの方が、結果的に作業の手間を省くことになり、作品の成功率が上がります。
製作の途中でスイッチやボリュームの位置を移動したい、LEDを新たに付けたい、など、いろいろな変更が出てきます。そこで、前面パネルの裏に3mmほど離して、アルミ板で作った「裏パネル」を設けて、必要な部品はまず裏パネルに取り付けて実装します。
裏パネルならどんなに傷をつけても、穴の位置さえ合っていればよいので簡単に対応できます。ネジ穴は1mmくらい大きめに開けておいて、ワッシャーを入れて締め付け、位置の微調整をします。大幅な変更が必要なら、裏パネルを丸ごと作り直せばよいのです。そして部品の配置が確定したら、裏パネルの部品が通るように前面パネルを丁寧に加工すればOKです。ナット類が表から見えず、きれいに仕上がります。
同じアルミニウム板でも、軟らかいものと硬いものがあります。もし、「硬い材質の厚さ1mmアルミニウム板」が手に入ったら、裏パネルとしては最適です。軟らかいアルミニウム板しか無ければ、厚さ1.5mmか2mmがよいでしょう。
最近、100円ショップでニッパーが売られています。その中で刃の焼入れがしっかりしていそうなものを探して「アルミニウム専用ニッパー」にして使うと便利です。
アルミ板に大きな穴を開けるには、3mmくらいの穴を隣り合わせてたくさん開けておいて、ニッパーで「穴をつなぎ」、ヤスリかリーマーで穴を広げると楽に作業できます。アルミニウムの場合、ヤスリの切れ味が良いことよりも、「大きさ・形が目的と一致したヤスリがあるか」が問題になるので、100円ショップやDIYショップの安売りで自分の持っていない種類のヤスリを見つけたら、買っておくと便利です。
私は自作に用いる部品のほとんどを名古屋で購入していますので、秋葉原と比べて入手できる部品の種類に限りがあります。昔の製作記事に多く出てきた「定番」の半導体でも廃品種になっているものがあり、代替品を確保する必要があります。私が50MHzまでの自作で使っている(=名古屋で入手できる)トランジスタを次に示します。
2SC1906の代替品としてfTが近いトランジスタを探す場合、VCEO=12Vの品種があるので、13.8Vの電源で運用する場合は要注意です。
半導体以外の入手困難部品は、次の所で入手しています。(名古屋ローカルの話題です)
注: 2021年現在、無線機の新規製作は行っておらず、また2020年からのいわゆるコロナ禍のため、電子部品を店頭で購入する機会は非常に少なくなりました。状況が変更されても上記の情報は原則として更新されません。
回路の接続ミスが無く、「音は出ている」「電波は出ている」けれど異常な動作をする場合、異常発振の可能性があります。実際の運用では、高周波段での異常発振は絶対に避けなければなりません。安全性を確保するには、「コイルのコアをどの位置に調整しても」「アンテナを外したり短絡させたりしても」異常発振をしないことを確認する必要があると思います。応急処置的な方法も含めて、異常発振を止めるためのヒントを示します。
発振回路の出力で共振回路を必要とする場合と、帯域フィルタとして用いる複同調回路以外には、回路内に共振回路を設けることは禁物と考えています。増幅段の結合にはフェライトビーズFB801のトリファイラ巻きトランス(3本のポリウレタン線をよく捻って2~4回巻き、2:1のトランスを作る)を使います。出力1W以上の回路では事実上、必須の条件です。
既に「共振回路を作ってしまった」場合、あるいは「発振回路の出力タンクコイルのコアを抜いていくと、ある所でバースト発振する」場合の処置として、コイルと並列にQダンプ抵抗(出力段の場合は10kΩ程度、入力段の50Ω系統の場合は220Ω程度)を入れる方法があります。
これに関連することとして、「送信機の最終増幅段の入力にはアッテネーター(3dBパッド、300Ω、18Ω、300Ωの抵抗をπ型に接続した減衰器)を入れる」原則があります。
音量を上げた時、「ブー」と低周波の発振をすることがあります。その対策には「デカップリング回路」を設けるのが最も確実です。特に低周波増幅回路の最終段には必須です。電源の+側に10~100Ωの抵抗を直列に挿入し、その両端を100μF程度(あまり大きすぎるとスイッチONから起動までの時間遅れが出ます)のコンデンサで接地します。高周波増幅段が発振した場合も、それと同じ対策で正常に動作することがあります。その場合は0.01~0.1μFのセラミックコンデンサを使います。
特に、最終段にLM386N、その前段に1石アンプを入れる構成では、この方法を採らないとかなりの確率で異常発振します。
スピーカーから大きな音が出た瞬間に、いわゆる「ビビリ」音が出ることがあります。スピーカーとシャーシが大きく振動することで分かります。これを止めるには、次の方法があります。
普通の回路では、「合成ゴム系の接着剤(商品名:ボンドGクリア など)」を厚めに塗ってスピーカーをシャーシに貼り付ける方法でよいと思います。しかし、ジャンク品のスピーカーなど、コーン紙の表層が剥がれて外れることがあるので、不安な場合は取付金具によるビス止めも併用します。
初めて自作のリグを作る場合、あるいは未知の周波数帯のリグを作る場合、出力(空中線電力)を何ワットにするか判断に迷うかもしれません。周波数、空中線電力によって、次のような違いがあります。
われわれアマチュアがリグを製作する場合、特殊な作業環境にない限り、性能面でメーカー製の機械を大きく超える機械を作ることは困難です。
自作をする理由の一つとして、自作なら「一芸に秀でたリグ」を作ることができると考えています。リグを作ろうとする場合、何を「一芸」にするかを決めてから設計すると、作ろうとするものの方向性が見えて来ます。
例えば、HFで充電式のバッテリーで動作するメーカー製のリグが10万円で販売されている一方で、乾電池動作するHFの単一バンド・単一モードの自作機が2万円で完成したとします。これだけでも、価格の点でメーカー製のリグより良い条件になったのですから、立派な「一芸」です。
メーカー製の小型機・簡易機に無い機能として「選択度を低くする」ことがあります。メーカー製の機械では選択度が良すぎて、相手局の信号と5kHzでも離れていると、その存在に全く気付かないことがあります。その点、例えば50MHzの超再生受信機などは、非常に受信周波数帯域が広く、周波数が離れていても相手局を見つけることができますから、「相手局を探す能力」ではメーカー機を上回っていると言えます。
最近のリグでは改善されていますが、メーカー製の古いリグでは電源電圧の低下に対して弱かったり、電源をONにした瞬間に大電流が流れ電源装置の誤動作を引き起こしたりすることがあります。自作のリグではその点でも有利にできます。
「なぜ自作をするのか」は、一言で答えにくい質問です。でも、自分なりの「一芸」を見つけて実現できる点で、自作の意義を見い出すことは可能だと思います。
2006年2月23日作成、2021年3月5日更新