サテライト移動運用アンテナ  by JO2ASQ

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 低軌道衛星を使った衛星通信(サテライト)は、モービルホイップやグラウンドプレーンアンテナでも交信を楽しむことができます。とは言っても、移動運用で短時間に多くの交信を行うためには、方位・仰角の両方が制御可能なビームアンテナが欲しくなります。

 しかし、1パス10数分の交信機会のために、アンテナの設置に数10分もかかってしまうのはナンセンスです。アンテナの設置に手間取っているうちに、衛星が過ぎ去ってしまっては意味がありません。市販のビームアンテナは組み立て・解体に手間がかかります。また、重量も重く、操作性に難点があります。

 そこで、カメラ用の三脚に取り付け、手動で方向を制御する小型・軽量の八木アンテナを自作しました。三脚を折り畳んだ状態で車内に収納しておけば、わずか2分ほどで設置が可能です。また、特に低い仰角のパス(信号が弱い)や、地上波での遠距離交信を可能にするため、必要に応じてエレメントを増設できるようにしました。2006年10月に衛星通信を始めて以来、このようなアンテナで延べ10,000局以上のQSOを行いました。出力は全て10Wです。

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寸法

 基本形は144MHz 4エレ/430MHz 7エレの八木アンテナです。衛星通信は異なる周波数帯で送信と受信を同時に行いますので、送信側の電波が受信側に干渉しないように処置する必要があります。また、430MHzで送信する場合に144MHzのエレメントが干渉し、SWRや指向特性が悪化することもあります。それらの問題点を解消するための最も簡単な方法として、エレメントを直交させる構造にしました。衛星通信に使われる円偏波などとの整合性は特に考えていません。

三脚の雲台部分で傾斜を変えることにより、

の2パターンを切り替えることができます。前者はエレメントが車のボディに当たりにくい(可動範囲が広い)ので、特に必要が無い場合は144MHz 水平/430MHz 垂直を使っています。

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構造

 エレメントは全て外径φ6mm(内径φ5mm)のアルミパイプです。ブームへの取り付けは「ナイロンサドル」を使っています。これは壁などにケーブルを固定するために用いる部品です。アルミパイプの外径よりもわずかに細いナイロンサドルにより、アルミパイプを挟み込みます。

注意:外形φ6mm、内径φ4mmのアルミパイプも市販されています。これは重くなるので、この方法でエレメントを固定するには不向きです。

ナイロンサドルは幅15mm、長さ50mm、厚さ2mmのアクリル板にネジ止めして、アクリル板の中央をブームに固定しています。ブームは1辺が9mmの「コの字型筋入チャンネル」と呼ばれるものです。断面が四角形のパイプよりも、コの字型の方が軽くできます。もちろん機械的強度には劣るので、ブームの「ねじれ」が大きく、注意して扱わないと変形することもあります。

 この方式の利点は、組み立て・解体が簡単なことはもちろんのこと、強風等でアンテナが倒壊した時に、エレメントが外れて衝撃を吸収するためにアンテナ(場合によっては車のボディ)の損傷が最小限で済むことです。これはメーカー製のアンテナには無い特徴です。

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 給電部分は、144MHzは強制バラン(FT-61#43コアにφ0.6mmポリウレタン線3回巻き)、430MHzは直接給電としています。直接給電でインピーダンスが50Ωに近くなるようにエレメントの配置を設計しているため、放射器のエレメント長の微調整だけでSWRは1.2程度になります。(2010.6 追記: 現行バージョンは144MHz, 430MHzともに直接給電+5D2V用パッチンコア)

 144MHzはノイズに弱いため、バランにより雑音成分をカットしています。バランは1mm厚のベークライト板に取り付け、熱収縮チューブをかぶせて保護してあります。同軸ケーブルは144MHz、430MHzとも、5D-2Vを4mです。

 収納時は144MHzのエレメントを取り外し、本体に「マジックテープ式コードバンド」で締め付けています。同軸ケーブルは接続したまま、車内に置いています。設営は三脚を広げ、144MHzのエレメント4本を取り付けるだけです。

 ブームと三脚の間は木製の角材で接続しています。角材は雨などで濡れると強度が低下してくるので、水性ペイントを塗って防水しています。

 共振周波数は、周囲に障害物が無い状態で、使用周波数の上限である146MHz付近、437MHz付近に調整しています。これは車のボディーに接近した場合に共振周波数が下がることを考慮したためです。

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 エレメントの先端に付いている黒い物は、熱収縮チューブです。回りに傷を付けないようにカバーとしています。

エレメント増設キット

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 低仰角のパス、混信の多いFM衛星、さらに地上波による遠距離との交信で使うには、4/7エレでは力不足を感じます。そこで必要に応じてエレメントを増設して、144MHz 6エレ/430MHz 12エレで使っています。ブームの先端にやや大きめのコの字チャンネルをネジ止めして差し込み口を作り、ブームの増設側にはアルミの棒を接続して差し込めるようにしています。

 144MHzのエレメント長は84cm(2本とも同じ)、間隔は44cm。430MHzのエレメント長さは28cm、間隔はそれぞれ18cmです。増設部分のエレメント長・エレメント間隔は簡略化のため全て同じにしました。

運用実績

 弱い信号でも確実に受信できるため、衛星が可視範囲から外れる限界まで交信が可能です。エレメントを増設すると、VO-52のMax El=1度台のパスでも交信が可能です。このアンテナによる1パス当たりの交信局数の記録を示します。

VO-52 50QSO (CW 29/SSB 21(注1))2010. 3.22 JO2ASQ/6 鹿児島県姶良郡姶良町(注2)
44QSO (CW 28/SSB 16)2010. 3.21 JO2ASQ/6 熊本県天草郡苓北町
43QSO (CW 29/SSB 13)2010. 5. 4 JO2ASQ/8 北海道空知郡(空知)南幌町
42QSO (CW 36/SSB 6)2009. 4. 1 JO2ASQ/4 岡山県岡山市東区(注3)
42QSO (CW 23/SSB 19)2010.10.11 JO2ASQ/8 北海道上磯郡知内町
40QSO (CW 29/SSB 11)2009.12.28 JO2ASQ/6 佐賀県西松浦郡有田町
40QSO (CW 26/SSB 16)2010. 5. 4 JO2ASQ/8 北海道美唄市
40QSO (CW 37/SSB 3)2010. 5. 2 JO2ASQ/8 北海道日高郡新ひだか町
40QSO (CW 36/SSB 4)2010. 5. 5 JO2ASQ/8 北海道雨竜郡(空知)沼田町
FO-29 51QSO (CW 36/SSB 15)2008.12.31 JO2ASQ/6 福岡県京都郡苅田町
50QSO (CW 37/SSB 13)2009. 8. 9 JO2ASQ/5 愛媛県伊予郡砥部町
49QSO (CW 33/SSB 16)2009. 7.20 JO2ASQ/6 沖縄県豊見城市
48QSO (CW 30/SSB 18)2009. 3.14 JO2ASQ/9 福井県敦賀市
48QSO (CW 30/SSB 18)2009. 5. 1 JO2ASQ/8 北海道余市郡余市町
48QSO (CW 35/SSB 13)2009. 5. 4 JO2ASQ/8 北海道天塩郡(留萌)豊富町
AO-7CW 16QSO(注5)2007. 9.22 JO2ASQ/6 福岡県前原市
2008. 3. 9 JO2ASQ/6 熊本県玉名郡長洲町
DO-64CW 6QSO2008. 8. 2 JO2ASQ/2 愛知県春日井市
AO-51 (FM)31QSO(注6)2007. 9.24 JO2ASQ/6 福岡県八女郡立花町
AO-27 (FM)25QSO2007. 9.23 JO2ASQ/6 福岡市城南区
SO-50 (FM)16QSO2007. 9.23 JO2ASQ/6 福岡県前原市
AO-16 (FM/SSB)9QSO(注7)2008. 2.11 JO2ASQ/2 名古屋市南区
ISS crossband repeater
(145/437MHz FM)
5QSO(注7)2009. 1. 5 JO2ASQ/2 愛知県瀬戸市
HO-68 (Linear Transponder)41QSO (CW 24/SSB 17)2010.7.17 JO2ASQ/7 青森県中津軽郡西目屋村

JAMSAT 五衛星交信賞を1日で達成し、さらに1日で6衛星を使用して異なる5局(合計30局)との交信も達成しました(2007.9.22)。

サテライトによる1日の最多交信数は420QSO(2009.4.29、VO-52:156、FO-29:197、AO-51:26、AO-27:28、SO-50:13)です。


作成 2008年4月23日,

[JO2ASQ]