JO2ASQ公式サイト解説移動運用で職務質問を受けたらどうする?

移動運用で職務質問を受けたらどうする?

夜間に移動運用したり、民家や公共施設の近くで運用したりすると、住民のパトロール隊が来たり、警察官の職務質問を受けたりすることがあります。そのような場合、どう対応したら良いでしょうか。

私の経験から、アマチュア無線の移動運用で職務質問を受けた場合の対応の方法をまとめてみました。これだけ知っていれば、安心して職務質問に対応できるでしょう。職務質問を恐れずに、移動運用をバリバリ楽しみましょう

こちらが違法行為・迷惑行為を行っていないことが前提ですので、その点は誤解の無いようにお願いします。

また、こちらに非は無いと思われる状況で、身に覚えの無い疑いをかけられ、気分を害された経験をお持ちの方もおられるでしょう。そんな時、私の体験談をもとに「他にも同じ悩みを持っている人がいる。自分が悪いのではない。」と前向きに考えていただけると幸いです。

電波を通じて、自分が移動運用したことを喜んでくれる人と会えるわけですし、子どもが外で遊ぶ習慣が無くなった現在、何か目的を持ってフィールドに出ることは、アマチュア無線以外にも得るものがあると思います。

  1. 職務質問は役立つ
  2. 職務質問の内容
  3. 若手警察官への対応
  4. 住民とのトラブルを防ぐには
  5. 職務質問の経験を生かそう
  6. 関連サイト

1. 職務質問は役立つ

職務質問に慣れていない方は、警察官やパトカーが接近しただけで緊張して、思うような会話ができなくなるかもしれません。私も最初はそうでした(就職活動で警察の採用説明会にも行ったことがあるのに)。

しかし、職務質問はパターンが決まっていて、事前に準備していれば軽く受け流すことができます。職務質問を受けて警察官と会話することに慣れれば、本当に事件・事故があった際に警察とのやり取りが円滑にできて役立つと思います。警察官は気さくな方、謙虚な方も多く、相手が要求する質問に的確に答えていれば、職務質問は滞りなく終わるはずです。

一方、状況を把握せずに一方的に不審者と決め付け、感情的・威圧的な態度を取る住民と話すほうが、対応が難しいです。「警察呼ぶぞ」と怒鳴られたこともありますが、警察官のほうが話しやすくて歓迎です。住民がいくら正義感・使命感に燃えてパトロールしても、そう簡単に事件は起こらないでしょう。そこで、警察に通報したという「実績づくり」の格好の標的にされるというわけです。

「不審に思われるような事をする方が悪い」という意見もあるでしょうが、私はそうは思いません。反社会的な行為はしていませんし、「不審者」の固定されたイメージがあって、それに近い雰囲気の人は皆、不審者に思われるのです。中年オヤジが道端でコソコソやってたら人のためになる事であっても不審者だし、若い女性が危険な行為をしていても不審者に思われないのが世間の常識です。私はそう考えているので、職務質問を受けたからといって移動運用のスタイルを変えるつもりは全くありません。

もちろん、騒音がうるさい、通行の妨げになるなど、こちらに非がある場合のトラブルは速やかに解決しなければなりません。しかし、パトロール中の警察官に偶然発見された場合や、住民から警察に通報があった場合など、こちらに問題が無い場合の職務質問では、時間の許す限りアマチュア無線の魅力をアピールしてしまいましょう。後日、近くで移動運用をする方の助けになるかもしれません。

万が一、帰り道で事件・事故に遭って連絡が付かない場合、「この時間に何処にいた」かを警察に証明していただけると考えると、保険の意味でも職務質問は意味があると思います。

2. 職務質問の内容

職務質問の流れは次のようなものです。順番はその時の状況によって変わります。

  1. パトカーの回転灯を点滅させながら警察官が来て、窓を開けるか車外に出るように身振りをする。
  2. 「失礼ですが」「ちょっとお尋ねします」など、相手の都合に合わせて質問を開始。
  3. 何をしていたか、その場の行為について質問される。
  4. 目的・動機について質問される。
  5. 警察官がどこから来たのか、なぜ来たのか説明を受ける。
  6. 運転免許証の提示を求められ、記載事項の確認を受ける。住所、氏名、免許証の番号、職業、電話番号のメモを取られる。
  7. どのように来たか、ここには何時から何時まで居るか、どのように帰るかなどを質問される。

この中で、最もしつこく質問されるのが目的・動機です。事件性・違法性を少しでも疑われる案件や、住民に通報された場合、まず目的を確認されることが多いです。何をしているか聞かれたら「アマチュア無線です」の一言でかまいません。密猟、盗電、盗撮などの犯罪行為とは違うことを示せば良いです。

何MHzで何処と交信しているとか、このアンテナは何かなどは、相手にとってはどうでも良い情報ですから不要です。目的・動機を的確に答えましょう。ただし、ごく稀に、警察官もアマチュア無線家で「コンテストですか。お稼ぎください。」などと言われることもあります。

回答例:「アマチュア無線で全市町村との交信を目指していて、ここの市(町・村)はインターネットで検索しても誰もやった事が無いので来ている。交信したら証明書を書いて無線連盟に送る。町中を走り回って、この場所は回りに何も無いので来た。」

回りくどいですが、警察官を納得させるには最低この程度の説明になります。他「仕事ですか趣味ですか」「無線をやるための免許は持っているんですね」「他にもやれる場所があるでしょう」「全国各地に行っているのですか」など、いろいろ聞かれます。適当に言葉を濁すと突っ込まれます。

資料をすぐに提示できるなら見せるとよいかもしれません。「アマチュア無線 移動運用」などの張り紙も有効ですが、警察官はともかく、住民パトロール隊の方はあまり見てくれません。

これ以外に「自分は怪しい者ではない」事を話したくなるかもしれませんが、質問されていない事を話しても警察官はまともに聞きませんし、双方にとって時間の無駄ですから止めましょう。住民の方が相手だと、何をしているかの答えを理解してくれなくて更に不審に思われることがあります。しかし、警察官はこちらから話題を振らなくても、質問に答えていればすぐに理解してくれます。

最初に「これは職務質問です」とか、警察手帳を提示してくるなどということはありません。警察官がやってきて「失礼ですが」「ちょっとお尋ねします」で始まり、「失礼しました」「気をつけてやってください」といった感じで終わります。

職務質問をされて困るのは次のようなことです。

3. 若手警察官への対応

2名の警察官が来る場合、若手の方と年配の方が一組で行動しています。このうち、若手の方が話しかけてきたときは、もし『そこまで言うか?』レベルの質問が来たとしても、軽く受け流してください。要するに職務質問の練習なので、時には不親切な言葉遣いをされることもあります。

相手の意に沿わない答えを返すと、厳しい表情で「~と違いますか?」「~とは思いませんか?」と先方の価値観を押し付けたり、こちらの居場所に何か問題がある場合「違反になる」「検挙する」などと法的用語を言ってきます(本当に問題があるなら、先に「退去してください、そうしなければ○○…です」と説明するのが正しい? 対応)。そのパターンにはめられると話が長くなるし、後味の悪い職務質問になります。

要するに、若手の方は本当に不審な人とそうでない人の区別ができないので、何でも初めから不審者扱いします。『そんなやり方では、もし“不審者らしくない不審者”が現れたら発見できないぞ』と言ってやりたいです(本当に言ってはいけません)。その点、年配の方は免許証の提示とか、なぜ・どこから来たかなど、形式的なことに妙にこだわりますが、目的・動機が分かれば、それ以上の疑いをかけることはしませんし、何か指示を出す場合も、威圧的な態度は取りません。もちろん若手でもその点に理解がある方はいます。

それとは逆に、目的・動機を聞かれた時にきちんと答えられないと、こちらが不利な状況になりますので、しかるべき準備(免許証や機材を堂々と見せるだけでも良い)は整えておきましょう。

パトロールは警察官1名、通報処理では警察官2名という傾向が多いようです。某国有施設の近くではパトロールでも2名の警察官が来ました。1名と2名のどちらが対応しやすいか、状況によって違います。

4. 住民とのトラブルを防ぐには

何でもかんでも「不審者」扱いしようとする昨今の状況では、住民とのトラブルを防ぐ決定的な対策は見当たりません(もちろん、騒音を防ぐ、通行の妨げにならないなどの一般的な配慮は当然として)。

民家から十分に離れていても通報される可能性があります。民家から200mほど離れた畑の脇で移動運用していると、住民パトロールの人が来て「あなたが何をしているか、あの辺の家で話題になっているよ」と言われたことがあります。200m離れていれば、都会の感覚では家の前ではないと思うのに、その住民は家の前と同じだと言うのです。その場所は、畑から200mの一本道が家まで続いているのではなく、途中に交差点もある畑の中の普通の道路でした。

この手のパトロールの決め台詞の一つが「お宅の家の前に知らない車が止まっていたら嫌でしょう?」。これで知らない車を全て追い出そうとする作戦でしょうか? 正直言って、私はそうは思わないです。見知らぬ車が止まっているよりも、近所の兄ちゃんがエンジン音バリバリで吹かしているとか、タバコの吸殻を捨てられる方がはるかに迷惑です。複数の場所で同じことを言われましたけど、「家の前」「知らない車」の認識が人によって違うのですから、実体としてはあまり意味の無い質問と思います。

顔見知りによる事件や、自動車以外の移動手段による事件も発生しているので、「知らない車」かどうかで不審者は判定できないのではないでしょうか。「騒音」「通行の妨げ」「アンテナ倒壊の危険」など具体的な理由を付けて欲しいです。具体的な理由には謙虚に耳を傾け、それ以外の文句は無視、ぐらいの気構えで良いかもしれません。

民家から離れた場所でも「密漁か?」と聞かれたことがあります。さらに2006年の後半からは、通報の対象になる新たに『電線の盗難』が加わりました。これを言い出すと、民家に近いかどうは関係なく、もはや住民の主観との駆け引きになってしまいます。

一方、北名古屋市の新市移動の時には、畑の中に住宅が点在するような地域しか確保できなかったので、やむなく民家から20mほど離れた場所で運用しました(200mではない)。一家に複数の自動車を持つことが当然の土地柄で、付近には駐車車両が多くあります。住民の方の反応は「面白そうやねぇ」「ほらーえらい(=それはすごい)わ」といったもので、非常に好意的なものでした(張り紙を貼ったり、こちらから挨拶したり、それなりの配慮はしました)。部外者に寛容な地域もあるようです。ただし簡単に知る方法はありません。

住民とのトラブルを避ける方法として「舗装されている道路を避ける」は有効かもしれません。民家から離れていても舗装道路であれば「我々も通行する道路を占拠するとは、けしからん」と目を付けられる可能性がありますし、パトロールの経路にもなるでしょう。私の経験では、未舗装道路で住民とトラブルになったことは一度もありません。ただし、危険防止として次の点は確認する必要があります。

  1. 私有地や管理用道路で、立入りが禁止されていないか
  2. 農作業の妨げにならないか
  3. 脱輪や転落の危険は無いか

こんなことで上手く場所を見つけられたら苦労はありません。

民家に近くても、川や線路を挟んでいれば、その向こう側の住民はほとんど気にしないと思います。

5. 職務質問の経験を生かそう

「振り込み詐欺」では、“警察官”“弁護士”などの言葉に弱いことを利用する、威圧的な口調で電話が掛かってくるなどの特徴が報告されています。

しかし、職務質問を受けた限りでは、警察官が威圧的な態度を取ることはありませんし(「厳しい表情」というのはあるけれど)、「○○警察署の者です」など所属を直接表す言い方はしません。「○○警察署の本署から連絡を受けて来ました」など、常に情報の出所を明らかにします。また、警察官が自分から名前を名乗ったことは一度も聞いたことがありません(こちらから通報した場合など、連絡の必要が生ずる場合を除く)。ですから、職務質問を経験することによって、本物の警察官はこんな事を言うはずがない、とある程度の判断ができます。

職務質問で警察官と冷静・中立に話をすることに慣れれば、何かのトラブルで警察のお世話になる時、きっと役立つと思います。

2006年7月2日作成、2021年3月5日更新