JO2ASQ公式サイト > 自作 > 1.9/3.5/7MHz 10mホイップアンテナ
※1.9/3.5/7MHz 逆L型アンテナもあわせてお読みください。
注意:2020年以降、ローバンドの運用ではオートアンテナチューナー+釣竿を多く使用しています。しかし、オートアンテナチューナーは損失が大きいため、性能を重視する場合には、こちらのアンテナを使用することがあります。 |
10mの垂直エレメント(バーチカル)アンテナにベースローディングコイルを挿入して、狭い場所でも1.9/3.5/7MHzの3バンドで運用を可能にしたアンテナです。都心部、道の駅などでの運用に威力を発揮します。
このアンテナの構成要素は次の通りです。
エレメントを垂直に設置して、同軸ケーブルのアース側を自動車のボディに接続することで、バーチカルアンテナとして動作します。7MHzでは、ローディングコイル無しでインピーダンスが約50Ωとなり、ほぼSWR=1で安定します。
3.5MHz、1.9MHzでは、エレメントにローディングコイルを直列に接続します。3.5MHzでは、インピーダンスの虚数成分が0になった場合(共振した場合)、インピーダンスは50Ωより低くなる場合がほとんどなので、これをマッチングトランス(トロイダルコアFT-114#43にポリウレタン線を巻いたもの)でインピーダンス整合します。トランスは6Pトグルスイッチで接続/非接続の切り替えを行います。
ボディアースは、ハッチバック基台の裏側の取り付けネジを強めに締め付けただけです。特別な電気的接続や溶接は行っていません。ただし、アンテナ基台の引き込み部分のケーブルを、トロイダルコア(FT-82#43、または同等のサイズの分割式コア)に3回巻きのソーターバラン(フロートバラン)としています。これはノイズ低減に効果があります。
ローディングコイルは、長さ28cm、最大直径10cmのポリプロピレン製食品容器に、φ1mmのスズめっき線を巻いたものです。食品容器はダイソーで105円(購入当時の価格)で入手しました。2021年現在、100円ショップで取り扱われている食品容器は小型・薄型化されており、110円でこの容器を入手することは難しくなりました。
注意点として、フタがネジ止め式のものは配線がねじれて取り付けできないので、フタがはめ込み式の容器を使用する必要があります。
フタの中央にM型コネクタ(メス)を取り付け、これとは別のMP-MPの中継コネクタを使ってアンテナ基台に取り付けます。フタには6Pトグルスイッチを取り付け、その裏側にインピーダンス変換用トランスを配線します。トランスはトロイダルコアFT-114#43にφ1mmのポリウレタン線を16回巻き、アースから10回巻きの所でタップを取っています。
ワイヤーは自在ブッシュと呼ばれる素材で保持しています。これは壁面のボード等に穴を開けて屋内配線のケーブルを通す時、穴の回りでケーブルに傷が付かないように被せるものです。電気工事部品の販売店で入手できます。
これを食品容器の側面にゴム系接着剤(Gクリアー)で貼り付け、スズメッキ線を巻きます。容器全体を自在ブッシュの歯に合わせて密巻きしたのでは、インダクタンスが大き過ぎましたので、バンド切り替えの部分が1歯おきの「スペース巻き」になるよう仮組みして巻数を決めたのち、新しいワイヤーで巻き直しました。巻数を増やせば1.8MHz帯でもマッチングが可能です。
コイルのインダクタンスは、10mのエレメントに対して1.8MHzでは約110μH、1.9MHzでは約103μH、3.5MHzでは約25μHになります(シミュレーションによる推定値)。インダクタンスメーターで計測しながら、これに近い値で微調整できるようにしておき、最終的には実際の運用環境で現物合わせします。
外付けコイルでおおよそのマッチングを調整しておき、アンテナチューナーで微調整する使い方も可能です。また、使用中にコイルの発熱や雨濡れでSWRが変動する場合に、アンテナチューナーで対応すると便利です。
エレメント長 | 1.9MHz | 3.5MHz |
---|---|---|
5m | 209μH | 56μH |
6m | 175μH | 47μH |
7m | 148μH | 39μH |
8m | 131μH | 34μH |
9m | 115μH | 29μH |
10m | 103μH | 24μH |
1.9MHz帯におけるSWR<1.5の帯域は約20kHzです。共振周波数は周囲の環境により大きく変動します。コイルのタップは半巻き単位で調整しています。トップローディング方式のように数mm単位で細かく調整する必要はありません。
障害物の無い場所で、同じワイヤーの張り方が再現できれば、SWR計だけでも調整は可能です。また、ワイヤーの揺れによってもSWRが変動するので、ワイヤーの数か所をマジックテープ式のコードバンドでポールに軽く固定しています。
この種類のアンテナとして、10m長の釣竿やグラスファイバーポールを使っている方も多いようです。私は5.4m伸縮ポールと5.3m釣竿を連結して長さ10mとしています。
竿の先端には「ナスカン(ワンタッチ取付金具)」を取り付けてワイヤーの先端を引っ掛けられるようにします。伸縮ポールと竿の連結は、厚さ10mmの木の板(幅7cm、高さ22cm)に穴を開け、4個のVボルトを蝶ナットで取り付けたものを使っています。最初は鉄板で作りましたが、重くて扱いにくいので軽量化しました。
受信については良好です。正規の電離層反射で599+20~30dBで受信できたり、7MHzで「BIG SIGS」というレポートをもらったりしたこともあります。ただし、非接地型アンテナと比較して、空電等のノイズに弱いと思われます。
アンテナ解析ソフトMMANAを使って、1.9MHzにおける利得を計算しました。ダイポールアンテナや逆L型アンテナと比較して10dB以上利得が低い結果です。しかし、遠距離向けにはホイップで良い成果が得られています。特に、自局が6エリアで運用した時には、逆L型アンテナよりもホイップアンテナの方が、8エリアとの交信比率が高くなりました。
逆に、1.9MHz/3.5MHzの近距離に対しては、天頂方向への放射が弱いため、ホイップアンテナは明らかに弱い信号となります。自局と同エリアとの交信数を稼ぐ必要があるコンテストなどでは、ホイップアンテナは不利と考えられます。
アースとして車のボディと導通を取る代わりに、20×30cmのアルミ板を車のボディに置いた(養生テープで貼り付けた)ものが使えます。レンタカーでの運用時に有効です。これでも1.9MHzでSWR<1.5となる帯域は15kHzほど確保でき、十分な安定性が得られました。
作成 2008年4月11日、更新2021年3月10日