JO2ASQ公式サイト > 自作 > 7~50MHz 8バンドホイップアンテナ
移動運用で7~50MHzを運用する場合、長さ2.5mの釣竿にM型コネクタとタップ可変式コイルを取り付けた自作ホイップアンテナをよく使っています。使用時は竿を伸ばしてモービルアンテナ基台に差し込むだけ、わずか1分でQRV可能です。
細くて目立たないので、混雑している場所でも周囲に迷惑をかけることはありません。
非常に軽く、マグネット基台を使えばレンタカーでも使用可能です。
付けたままで高速走行可能な強度はありません。駐車場の中で少し場所を変える、といった程度なら可能です。
以下、自作の方法を説明します。
図1: 全体図 |
図2: コイル部分拡大 |
図3: レンタカーによる運用例 |
釣竿は全長270cmのグラスファイバー製・万能硬調竿です。石突き(根元部分)のネジを外すと、穂先部分を抜き取ることができます。後述するM型コネクタの取り付けに使うため、石突きの内径を確認しておきます。
エレメントは0.75mm2のビニル線(いわゆるACコード)です。末端部分は圧着端子を取り付け、さらに芯線部分が折れないように熱収縮チューブで補強しています。
コイルは全て外径20mmのアクリルパイプに0.3mm2(外径約2mm)のビニル線を密着巻きにしたものです。7MHz用のコイルの一部だけ、0.2mm2のビニル線にしています。タップ部分はアクリルパイプに穴を開けてパイプの内側からビスを通し、そこに2枚の卵ラグをナット締めしたものです。移動運用ではナットが緩みやすいので、スプリングワッシャーを入れます。
みの虫クリップ(ニッケルめっき)は、雨に濡れると錆びやすいので、金メッキ製を使っています。
コイルの巻数データ
長さ2.5mのエレメント(28MHzの1/4波長)に対して、ベースローディングコイルを入れて各バンドにマッチングさせる場合のインダクタンスのシミュレーションでの計算値は、次の通りです。
コイルの巻数は一つ高い周波数帯からの「差分値」、インダクタンスは全ての巻線を合算した「積算値」で表記していますので、ご注意ください。
各バンドのタップに切替用のミノムシクリップを接続した場合に、上記のインダクタンスに近くなるようにインダクタンスメーターを使って大まかに合わせておき、実際の設置環境で、高い方の周波数から順番に、各周波数帯でSWRが下がるように巻数を調整します。
50MHzで使う場合は、コイルを無し(28MHzと同じ設定)にして、エレメントの途中にあるギボシを切り離します。ギボシの保持には、プラチェーンを切った物を使っています。
28MHz(コイル無し、1/4λ)の設定では、24MHzでも十分にSWRが低く、そのまま使えることがあります。
7MHz帯の全域をカバーするには、7MHzのコイルを細かく分割して、1~2回巻のタップを設けると微調整ができます。
コネクタ MP-10DFB の同軸ケーブルを差し込む部分の内径は14mmです。釣竿の根元のキャップを外すと、内径は14mmで、偶然に一致しました。そこで、コネクタと釣竿に外径14mmのアルミパイプをはめ込んで接続しました。
14mmのアルミパイプは一般には入手困難です。2005年頃にダイソーで「アルミ丸パイプ シルバー」として外径12mm、14mm、16mmが売られており、その時に買い占めたものを使いました。
作業手順を示します。
図4:M型コネクタと釣竿の接続方法 |
図5:M-P型コネクタを釣竿に接続したところ |
まず、50MHzのギボシを取り付けます。給電点からの長さは 1/4波長×短縮率です。28MHzも同様です。28MHzでのエレメントの長さは258cmです。
ワイヤーの長さが決まったら、竿の先端にワイヤーを取り付けます。竿の先端は ゴム系接着剤+熱収縮チューブ+インシュロックタイ の3重構造で固定しています。竿の先端の余った部分は切り取ります。先端が折れないように、先端の数cmにピアノ線を埋め込んでいます。
その後、24MHzから順に巻き数を実測で決めて、コイルのビニル線をタップ部分の卵ラグにハンダ付けします。
図5:このアンテナに使っている50MHz切り離し用のギボシ端子と同種のもの。黒い網状の物が鉢底ネット(現行品はプラチェーンに変更) |
7/10MHzでは、設置環境により共振周波数が変動しやすいため、コイルのインダクタンスを微調整する必要があります。その調整は、道具を使用せずに行うことができます。
※この調整方法は筆者のオリジナルです。
7/10MHzでは、コイルを巻いただけでは給電点インピーダンスが50Ωよりもかなり高く、SWRが概ね2以下には下がらなくなります。そこで、簡易型のアンテナチューナーを自作して使っています。アンテナ側のコイルの巻数が適正であれば、150~300pFのコンデンサを並列にするだけでSWRが下がります。
このチューナーの整合範囲は狭いので、共振する範囲から外れた任意長のワイヤーにマッチングする能力はありません。リグ内蔵のアンテナチューナー等が使えるのであれば、それを使っても構いません。
マッチングが不要な場合は、スイッチを中点OFF、コイルの巻数をゼロに合わせます。
図7:簡易アンテナチューナーの配線図 |
図8:簡易アンテナチューナーの外観 |
バリコン300pFと書かれているものは、300pFの高耐圧バリコンが入手できないための代用品で、150pFの高耐圧バリコンと並列に150pF 2kVのコンデンサをスイッチで並列に接続しています。
また、RIG側のM型コネクタは2個装備し、6Pのトグルスイッチで切り替えています。使用していない側の芯線はアースに落としています。
レンタカーで運用する場合、あるいはモービルアンテナ基台が使えない車の場合、マグネット基台を使って車の屋根に取り付けます。強風の場合は、マグネット基台を養生テープで車のボディに貼り付け、竿の中間部からロープでステーを取ります。
レンタカーの場合、強風でアンテナが倒れてタップ部分のビス等で車を傷つける可能性があるため、コイル部分を、プチプチシートと養生テープで防護すると安心です。
アースは20×30cm、厚さ1mmのアルミ板の一端に大型のバッテリークリップ(M型コネクタを丸ごと挟める特大のワニ口クリップ)を取り付けたものを車の屋根に置いただけです。7MHz以上では、この大きさで十分に動作します。
10mホイップアンテナを参照してください。
回り込みが発生すると、リグに触ると感電したり、キーヤーが暴走したりします。その場合、3mくらいのワニグチクリップコードで、リグのアース端子と、車のボティ底部の鉄骨(塗装の無い部分。運転席か助手席の下の、ジャッキを当てる凹凸の付近が良い)を接続すると止まります。ワニグチクリップコードが無い場合、適当なビニル線、園芸用アルミ針金の細いもの、バッテリー上がり用のブースターケーブルで代用可能です。
作成 2006年5月21日、更新2021年3月5日